搾乳関連機器-点検のポイント

1.高泌乳牛に多い過搾乳-改善の決め手は酪農家の眼

永年酪農機器メーカのサービスを担当し、製品の整備・点検を通して製品の品質向上、代理店への講習・指導により技術力向上に勤めてまいりました。そして、何よりも重要なことは、搾乳作業に携わる皆様の「機器の取扱い」「衛生管理」が、突発的な機器の故障や乳質の低下を未然に防ぐことができることを身をもって体験しております。

私達サービスマンはミルカーのスイッチを入れ、真空ポンプの音を聞いて『正常』か『問題が有る』かの判断をします。しかし、皆さんが毎日同じ機器を使い、同じ音を聞いていると悪い音も正常と錯覚する事もあります。気がつかない所で機器部品の消耗が始まっています。日常点検を怠ったために多額の修理費用が発生したり、せっかく搾った牛乳が廃棄処分となってしまったり、収益のマイナスになった経験のある方も多々あると思います。

今後、皆さんが簡単にできる搾乳・冷凍機器のチェック方法等を【12回 】にわたり、メーカサービス担当の視点で紙面に載せていきますので大いに活用していただき、毎日の作業の手助けになれば幸いです。

今後の掲載計画として、ミルカーの構造と機器のチェックポイントについて 7回、バルククーラー能力算出方法とコンデンサー清掃の重要性について 2 回、洗浄知識と汚れ箇所チェックポイントについて 2回操作ミスによる事故事例と対策について1回 を掲載していきます。

また、酪農機器は『ISO』『3A』等の規格に沿って設計・設置をされてきました。中でも当社はミルカー(バケットミルカー、パイプミルカー、ミルキングパーラー)の【システム点検】の必要性から『 ASABE (米国農業・生物工学会)新基準』を採用し、平成8年から設置基準の見直しを行いました。

これから連載される中で『 ASABE規格 』も盛り込んでいきますので、参考にして頂きたいと思います。

今回は、まずご自分の牛舎、牛、酪農機器についての自己診断をしていただき、改善すべき点は何か、問題点は何かを明確にしていきたいと思います。

私達が酪農家さんへ訪問した時に、必ず次のことを質問します。

  1. 搾乳牛頭数
  2. 出荷乳量
  3. 搾乳者人数
  4. ユニット台数(1人何台)
  5. 搾乳所要時間と搾乳順序
  6. 離脱装置の有無
  7. 搾乳終了時のバルククーラー乳温
  8. 細胞数
  9. 生菌数
  10. 総菌数
  11. 乳脂肪率

これらの質問の回答から、今この酪農家さんでは何が起こっているのかを判断します。

仮に、搾乳者が1人で自動離脱装置無しのユニットを5台使用し、体細胞数が多い場合、私たちは、過搾乳の恐れがあると診断し、搾乳に立ち会います。一般的に 1人が扱えるユニット数は2~3台(自動離脱装置無し)が限界と言われているからです。これはほんの一例ですが、その他質問の回答結果により、様々な問題点が予測できます。

それでは、皆さんの『乳牛の平均乳量』を確認してどんな事柄を注意したら良いか予測してみて下さい。

平均乳量に応じ、何を注意しなければならないか
(○注意する◎特に注意する)
平均乳量 25kg以下 26~35kg 36kg以上
1人あたりのユニット数
搾乳時間
搾乳順序
離脱装置流量感度

平均乳量(kg)=出荷乳量÷搾乳頭数

1頭あたりの搾乳時間(分)=搾乳時間÷(搾乳牛頭数÷ユニット数)

上記の表は、平均乳量に応じ、何を注意しなければならないかを示したものです。

例えば、36kg 以上の牛は全項目で「特に注意する」ようになっております。これは、高泌乳牛ほど1分間あたりの流量が多く、搾乳時間も3分~ 5分で、乳量の少ない牛より搾乳時間が短くなっています。

1人あたりのユニット数が多く、他の牛に気を取られている時に高泌乳牛が過搾乳となっていることがよくあります。高泌乳牛ほど環境にデリケートであり、搾乳技術の誤り、ミルカー不調等により乳房炎になる確率も高くなっています。平均乳量に応じて『皆さんの見る目』(注意する点)が変わることを理解してください。

また、【体細胞数、生菌数が多い】牧場では、下表を参考にご確認願います。

(カウシェード牛舎の場合)

体細胞数、生菌数が多い牧場の確認事項1
項目 判定 確認内容
牛床が汚れていないか 良・否 牛床の除糞回数  (回/日)
カウトレーナー  (有・無)
乳房が汚れていないか 良・否 敷き料  (有・無)
カウテールタイ  (有・無)
毛刈り  (有・無)
乳頭が汚れていないか 良・否 搾乳後のディップ  (有・無)
過搾乳はないか 良・否 1人あたりのユニット数(台)
体細胞数、生菌数が多い牧場の確認事項2
項目 判定
機器
ミルカー、バルククーラー
ミルカーが汚れていないか 良・否
バルククーラーが汚れていないか 良・否
バルククーラーの冷却能力は良いか 良・否

乳房炎の原因菌である『黄色ブドウ球菌』『大腸菌』などが4本の乳頭口から侵入して発症することを考えると牛舎環境、機器の衛生面での改善が重要なことを理解してください。

( 搾乳手順の誤り・環境の不衛生・搾乳時の不衛生 ) ・ 牛・機械 (ミルカーの機能不良)すべて三位一体で改善してこそ、最大の収益改善につながります。

夏場に『列車のレールが伸びる』ということは経験で知っておられると思いますが、今お使いのパイプミルカー(パーラー用ミルカー)も搾乳毎、洗浄毎にミルクラインが伸び縮みし、緩み・歪みになって接続部のエアー漏れ、パッキン類の消耗につながっています。

毎日の点検の重要性を再認識していただき次回からの掲載に期待してください。

次回は、ミルカーの日常点検【真空圧の管理】(真空圧の確認、圧力単位、真空ポンプの点検内容、真空調整器の調圧機構と点検方法) を記載する予定です。

皆さんの目・耳・鼻をフルに活用して頂きたいと考えています。

『皆様の目』が現状と今後を改善します。